2013年8月20日火曜日

【本】ハイペリオン

ダン・シモンズの「ハイペリオン」読み終わったわ。

あんな内容やってんねぇ
本作と続編(パイペリオンのの没落)のタイトルから、勝手にハイペリオンって銀河帝国(かその主星)の興亡史かと思ってたわ

後書きを読むと、ジョン・キーツって早世した不遇の詩人に同名の未完詩があって、それをモチーフにした作品なんやってねぇ。
全然、知らんかったわ、有名なの??
キーツは本編でも物語のキーとなる存在としてたびたび出てきます。


<以下、チョイネタバレ>

実際、本作はハイペリオンにある時の墓標をめざす、7人の巡礼者が一人ひとり、旅をするにいたった理由を語るというスタイルなのね。
で、それぞれの因縁を抱えていよいよ時の墓標というところで、つづきは続編の「ハイペリオンの没落」に続くと…
非常に面白かったんですが、期待値が高すぎたせいか、「すぐに続編よみたいっ!」というほどには盛り上がってない俺ガイル。

訳文はいかにもなSF翻訳本的で、非常に読みやすかったんですが、原文はもっと叙情詩的だったんじゃないのかしらと思ったり(わからんけど)…

J.G.バラードの翻訳みたいに、もそっと飲み込みにくいこねくり回した表現のが雰囲気でたような気もいたします。
まぁ実際そう書かれてたら途中でなげだしてそでもありますが…

とりあえず、続編「~の没落」も下巻だけ古本屋の特価本コーナーで入手しておりますので、記憶がなくならないうちに上巻も入手したいと思います。

こちらからは以上です

ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

2013年8月15日木曜日

【本】ハードボイルド 原尞(はらりょう)

ハードボイルド 原尞(はらりょう) 読了

私が日本人で一番好きなハードボイルド作家・原尞(はらりょう)の小説以外のお仕事をまとめた本。
もともと「ミステリオーソ」という単行本ででてたのを、増補分冊したうちの一冊。
もう一冊はそのまま「ミステリオーソ」というタイトルで音楽や映画関連をまとめてあって(未読)、こちらは海外小説の後書き・エッセイ・対談・未収録短編などを本にまつわるものをまとめたもの。
チャンドラーへの敬愛、他の作家達への尊敬、小説論などがかいま見えて非常に面白かった。

原尞はもともと我流のジャズピアニストをやっていて、映画の脚本などをやったあとに、思い立って探偵小説を書きだしたという、なかなか異色でかっちょええ経歴の持ち主。
さらに、探偵小説を中心とした読書歴もすごいものがあるんですが、そういう人にありがちな「俺様すごいだろ」感が臭ってこないのが、実にいいですな。

チャンドラーはほぼほぼ読んだことあるけど、他に作者が愛した作家・シリーズを読みたくなってきましたよ。

備忘メモ
- キャビン・ライアス マクシム少佐シリーズ
- ロス・マクドナルド
- 結城昌治
- ロバート・B・パーカー
- トニィ・ヒラーマン
- マクケル・Z・リューイン
- デイヴィット・グーデス
- コーネル・ウールリッチ
- ロス・トーマス
- ジョルジュ・シムノン メグレ警視シリーズ

作者の小説論がよくわかる部分をちょっと紹介
なるほどこりゃ寡作家になるわけだ

P28 『暗い落日のこと』より
 私は、私立探偵という職業がこの国で成立しているかどうか、小説の主人公としての私立探偵にリアリティがあるかどうか、という点についてはまったく思い悩まなかった。人はいざ知らず、私が私立探偵を主人公にした小説を書きたかったのは、この日本の現状などに触発されたからではなくて、あくまでもレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウという”存在”に触発されたからで、ほかにどのようなリアリティも必要なかったのである。例えば、作品の中の医者である人物にリアリティがあるのは、その職業がひろく実在しているからではなくて、書き手にその人物にリアリティをもたせる筆力があるからである。

P92 『生粋の小説家シムノン』より
 何一つ資料を参照せず、何一つ調査などせずに執筆された小説―まるで文学少女がお手軽に書き散らした三文小説の文章と同じように純粋に作家の想像力のみで紡ぎだされた”傑作”というのが、私の小説の理想である。
 確かにありとあらゆる小説が書き尽くされた感のある今日では、小説というものの枠組みも拡充されてしかるべきかもしれない。なるほど資料(史料)を駆使した小説も、調査に基づく小説も否定することはできない。だかそれらは結局資料(史料)+小説であり、調査+小説であり、それがたとえ成功していたとしても、小説の手柄は減殺されるべきものであるし、まして、その資料や調査が読者をうんざりさせているとしたら、もはやその小説は死に瀕していると言わなければならない。シムノンに限らず、私の好きな小説家たちはそういう小説は一冊も書かなかった。バルザックもドストエフスキイも。もちろんチャンドラーも。そして山本周五郎も。

ハードボイルド (ハヤカワ文庫JA)